新緑の季節に幻の紅茶の香りを ~ 第7話

日差しがまぶしい季節がやってきた。
最近は東京都内へ出かける機会が少ないが、湘南新宿ラインで湘南から大崎へは一本で行けるので大変便利だ。
大崎ゲートウエイ・エリアは十年以上前とは全く様変わりして駅の周辺は高層ビルがニョキニョキ筍のように乱立している。
どこか殺伐とした新宿の高層群と違い、この辺りはビルの谷間に緑が多い。
そんな高層ビルの一階にはオープンテラスのカフェやレストランが多く並んでいる。
どことなく丸の内のカフェエリアのような都会的な雰囲気を漂わせながら、緑の中でゆったりした空気が流れている。
ビルの谷間をのんびり歩きながら散歩をするのには最適な空間をすごせるステキな区画。
晴れた日は痛くなるくらい若緑が目に飛び込んでくるくらい明るいが、さわやかな風と木々が大きく木陰を作っているのでジャケットを着ていてもそれほど暑くは感じない。
そんな前をいく視界を、光を反射してシルバーに輝くビルとずっと続く緑の街路樹が半分ずつを占めている。
エスカレーターを通って広い下の道へ降りると、辺り一面鮮やかな新緑の森に突然放り出されたみたいだ。
少しカーブしたビルの谷間を歩いていくとだんだん道幅が狭くなってくる。
遠くで行き止まりみたいに見えるその道の端は広い別の道にぶち当たっていた。
そんな通りの行き止まりともいえる場所に緑のひさしの小さいお店が現れた。

実はわざわざこの街にきた目的は、茶葉を買うため。
私の紅茶買い出し紀行は普段は横浜や湘南エリアが主なのに、何故今回東京かというと私がほしいインド紅茶は湘南エリアにあまりないから。
もちろん、一部横浜方面にはちゃんとした取り扱いがある店舗もあるのだが。。。
横浜・湘南にはセイロンティーの良質な茶葉が買える店がとても多い。まさにセイロン王国だ。
だが、インド紅茶というとチェーン店が主体になる。
ルピ○○とかはシングルオリジンエステートの茶葉を求めるのにも比較的良質な店なのだが、WEBでは見かけても実店舗には在庫切れだったりしていることが多いので、直接仕入れの専門店や卸売りもしているような店の方が物があったりする。そして一番よいのは比較的コスパがよいものを買えること。
まるで大阪人のように良いものを「これ安かったんや」という買い物が好きなのだ。
直買い付けの会社は、現地とのコネクションが強いところもあるので一般の買い付けで見られないカスタムな茶葉も仕入れることができるのが強み。
シングルオリジンの農園茶葉で、ダージリン キャッスルトン農園のDJ-1です!的なものを売りにする銀座や関西の会社はブランド志向で高値で売られているので、それは戦略としてありなのだと思うが、「だから一番おいしい」ということでなくとことん個性を極めたい方のためにあるように感じる。
まるでボルドーの5大シャトーやDRCのワインどれだけ飲んでいるかに固執するのと同じように感じる。
紅茶に限っていえばロット限定の茶葉は個性がありすぎて「当たれば最高 はずれたら涙」なところがある。
だから今年のLOT○○とLOT○○のブレンドでと言って買える業者の方が、好みがわかれば安心して買いに行けるお店になる。
ブレンドでも店によってシルバーチップやゴールドチップだらけのような夢のような“エクセレント・クオリティ“なものもある。そういうコスパの最高に高い紅茶を手に入れると一日しあわせになれる。
ブレンダーの方に、「いい仕事してますねェ」と言いたくなる。
今回のお目当ての一つは、”幻の紅茶”ともいわれる「SIKKIM(シッキム」。
ネパールとブータンに挟まれた古えのシッキム王国で栽培されている紅茶。
行った時にはシーズナブルなものはすでに売り切れでなかったが、オールドシーズンのものはまだ在庫が売られていた。
家に帰って後日シッキムを淹れてみる。

一煎目:2分半~3分ほどでストレート。さすがダージリンより王族の風格をまとった上品な甘さ。
二煎目:3分から4分弱でいれるとさらに甘さを感じる。
渋みを心配したが、全く澄んだ味のまま。紅茶を淹れすぎたときにでるタンニンの
渋みが出てこない。
さらにミルクをいれてみると元々のミルク臭に似た味があるため相性は悪くない。
三煎目:ガラスのティーポットいれて水出しをしてみる。
何もいれなくても茶葉自体からでる甘味のあるアイスティーは、いままで飲んだ
他の産地の何処の農園の茶葉でいれたアイスティーよりダントツ。

普通なら三煎目は出がらしになるはずだが、熱い日には嘘みたいにおいしい。
こんな飲み方ができるなんて”幻の紅茶”の看板に偽りなし。
実はシーズンブルないい方のシッキムも後日入手したが、これはお世話になった知り合いへのお持たせ用。
自分では飲んでいないので、想像でしかない味。そんな期待をもったままなのもいいね。
他のインド紅茶は改めて次の話で。


【シッキム(インド紅茶)】
インドティーの生産地は、主に北部山岳のダージリン地方産と低地のアッサム地方産が主であとは南端高地のニルギリの産地になる。
北部にはダンクタ地方(Dhankuta)やドアーズ、など生産量が少ない他の地域も存在している。
そんな希少産地の中でダージリン州の北にあるのが現在では単一農園となった「テミ茶園」でとれる“シッキム(Sikkim)”。
ファーストノットは甘い香り。どこか阿里山の茶葉のような澄んだ香りの中にライチを思わせるようなさわやかで甘めのフルーツ香がします。
ストレートをお勧めしますが、ミルクを少し入れると上品な甘みが引き立ちます。
(注)茶葉のクラス
OP=オレンジペコーは細長く美しい針状の葉を指します
BOP=少しカットされた抽出が早めの葉
それにさらに品質を示す略称がつき、
F(フラワリー)OP<TG(ティッピー・ゴールデン)FOP
<F(ファイン)TGFOP<FTGFOP1(同一グレードからさら厳選)
<S(スペシャル)FTGFOP1
というようにグレードを示す記号が表示されています。