宝石や宝玉にまつわるトピックスを物語仕立てで載せています。
物語に登場する人物、店舗・施設は架空のもので実在のものとは関係ありません。
各ページで出てきた宝石・宝玉に関する知識は雑学として掲載しています。

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7月 ルビーの輝きと真っ赤な嘘 ~ 第7話


月菜は休日の昼下がり、読みかけの本をとじた。
今お気に入りのその本は「月夜航路」
何年か前に出版され最近ドラマ化された。
人気女優の若手と中堅の二人の掛け合いが絶妙でホームズとワトソンよろしく謎を解いていく話。
女流作家のこの作品は、最近の手の込んだ推理小説と比較するととても素直なシナリオでドラマも原作のストーリーを忠実に再現しており、安心して読んで(見て)いられるのがとても心地よい。
某テレビ局の人気シリーズ「AIB〇」のような脚本のジェットコースター感がなく四転、五転を一話で繰り返さないと気が済まない作品とは一線を画すものだ。(あれも最近は脚本がマンネリになってきていて、次の展開が見えてだんだん飽きてくるのだが)

作品に流れる穏やかさは、登場する実在(した)作家が明治から昭和のノスタルジーを覚える“文豪“である事に依存する部分があるのかもしれない。
最近、直木賞や芥川賞作家をめざす方でもないと昔ほどは一般には読まれなくなった方たちだ。
その方たちの作品を一つや二つは名前は知っていても実は作品をちゃんと読んだことないという人も増えているのではないか。

月菜が気になったのは、ドラマの影響もあるが主人公がルナという名前だったのも大きい。
自分も月の菜と書いて”ルナ“と読むからだ。
自分にも久美子という親友がいるのも親近感を感じた。

外は初夏。鎌倉から逗子にかけての閑静な住宅街には時折リスが庭や電柱を駆け回る風景を見かける。
鎌倉は都内と違ってやわらかい空気が街にながれている。
窓を開けて庭の風を呼び込みながら、今日連売所で買ってきたシフォンケーキを食べては濃いディンブラの紅茶を飲んでいる。
“レンバイ“もしくは”のうきょう“は正式名称は” 鎌倉市農協連即売所“。
近隣のレストランだけでなく、都内からも鎌倉野菜を買いに来るシェフが多いらしい。
月菜も朝早く江ノ電に乗って買い出しに出かけることがある。
そんなおなじみな所でも普段“レンバイ“としか言わないでいると「あれ、正式名称なんだったけ」となりがちだ。 
もっともお金持ちの鎌倉マダムは”紀伊國屋”や”ユニオンUNION”で買い物するのだろう。
(紀伊国屋は意外と野菜がお手頃で新鮮なのだ)

テーブルの上には懐かしい友達から来たハガキがのっている。
「今度の横浜のミネラルマルシェ 知り合いの手伝いで参加しているから来てね 留依」
古い友人の留依からだった。もっとも古くから友達のみんなは“トメちゃん“と呼んでいるけれど。

はがきに書かれたチェリーの赤いイラストを見た時、彼女と知り合うことになったある事件?を
思い出していた。

それは月菜がまだ中学生だった頃の話。
月菜は父親に連れられて横浜の中華街へ来ていた。アクセサリーも扱う店を楽しそうに見ていたが
ふと軒先のアクセサリーに赤く光る髪留めが目にとまった。
何とはなしに手に取ってみていると奥から「お嬢さん 目が高いね。今なら安くしとくよ」
と店員がでてきた。
「こんな高そうなの買えないです。これってルビーですか? とてもきれい」
「これはガーネットだよ。でもちゃんとした天然石だからね。質もいいよ。」
「こっちの透明度でない赤い石は実はルビーだよ。宝石ではないけどね。」
「へえ、光沢がなくてもルビーなんだ。」

月菜は、ガーネットと言われた髪留めをつけてみて鏡に写した。
値段は格安でとても似合っている。
上目遣いに父親をみると、誕生日プレセントだと言って気に入ったなら買ってあげるよと言われた。
「ほんと、うれしい! おじさん これ、ください。」
父親が髪につけてくれると、月菜は嬉しそうに父親の腕をとった。

そのまま散歩を続けていると、少し裏通りに入っていった。
「中華街は、裏通りに結構いい店があったりするからね。」
目についた一軒にはいると、本当に当たりだった。
表通りの一流飯店のような高級一品はおいてないが、どれもリーゾナブルなのに味は思わず目を開く位おいしかった。

結構な量をぱくつき、最後に杏仁豆腐でしめた。
この杏仁も寒天のまがい物でなく、ちゃんとしたアンニンだった。
二人は満足そうに会計を済ませると店を後にし、さらに腹ごなしがてら散歩を続けた。

街のはずれを抜けたあたりに一軒の露天商のような小さな店がでていた。
街の端にあるにも関わらず店先には指輪やペンダント、イヤリング・ピアスといったアクセサアリーが並び、若いカップルや中年の夫婦らしき人で混みいあっていた。

店の一角には“質流れ”と書かれた大きなボックスがありその中にいろいろなアクセサアリーが無造作に並んでいた。

若いカップルがその中から、それなりにけっこう大きな赤い石のついた指輪を手に取った。
「ウワー!これキラキラして素敵。私の指のサイズにぴったり。おじさん、これいくら?」
「お嬢さん目が肥えてるね。これはある宝石店の倒産処分品なんだけどルビーでね。10万円だけど元は20万円以上する価値があるよ。」
「智也さん、あなた宝石に詳しいんでしょ。これどう?」
「どれどれ、・・・カットは古いけどちゃんとした天然石みたいだ。これだけ傷がなくて透明度が高ければ結構お値打ちだよ。」
連れの子はすごく欲しそうな顔になりおねだりし始めた。
男はしばらく迷っていたが、店主に今日は最終日だから8万円でいいよと言われると、いいところを見せようとしたのか現金をだして購入した。
「ウワー!じゃつけてみるね。」
光にかざして「きれい・・・」と歩きながら眺めている。男も抱き着かれてまんざらではない様子。
後ろにいた若い高校生らしき女子ふたりがひそひそ話しているのが聞こえた。

「いいわねえ、私もあんな彼氏ほしい。」
「やめときなよ、まともに石もわからない彼氏なんて。」
「え、あれルビーじゃないの?」
「まあ、素材はコランダムだからルビーと言ってもいいかもしれないけど、あまりきれいなものじゃないわ」
「え、あんなにキラキラ光っているのに?」
「鉛で含侵処理して透明で傷がないようにみせているの。価値はそんなにないよねえ。」

そういうと、その女の子は月菜の髪留めに目をとめた。
「素敵なガーネットの髪留めね!」
「ええ、さっき向こうのお店で買ったの。」
「表面に膜がついて少して汚れているけど、きれいに拭いてあげればもっと輝くわよ。」
「前の持ち主がいたずらしたのかも・・・。」
といって、眼鏡拭きのような布を差し出してきた。
月菜は、一瞬怪訝な顔をしたが真面目そうなその子の目をみたらそのまま布を受け取り一度拭いてみた。
すると今までより一層深い赤色が増し、光にキラキラ反射しだした。
「すごい! こんなに変わるのね。」
「私のうち、この近くでジュエリーショップやっているの。手ごろなものも置いているから今度寄ってみて。」

「私、留依って言います。」

そんな縁で知り合ってから、二人は実は同じ年だと知り、その女の子の父親の店へ行くようになり間もなく仲良しになった。

後日談ではあるが、二人が店の奥でおしゃべりしているとき前に路地奥のお店から指輪を買った子がこの前一緒だった男と婚約指輪を買いに来ていた。ふと女の子はこの前買ったルビーを鑑定してもらおうと思い立ち、指輪を見せた。
店主は、こういった。
「残念ながら鉛で処理した指輪なので普段のイミテーション替わりに気軽につかうのをお勧めします。」

「え、」というと憤然とした顔で相手の男にどういうこと!と詰め寄った。
その後二人が喧嘩を始め、店を早々に出ていった。

「お父さん、指輪売りそこなったわね 笑。」
「まあ、買ってもらってもなあ。ここの指輪もうまくいくがわからない人のところにいくのもかわいそうだ。」

ちょっと惜しいことしたな、と呟きながら月菜にゆっくりしていってねと言うと店主は奥へ引っ込んでいった。
月菜と留依は何もなかったかのように、おしゃべりを続けた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「みなとみらいかあ、しばらく行ってないな。」
「留依に会いたいしマルシェで何か買ってみてもいいか。留依がいるから損することないし。」

 そうつぶやくと、残りのシフォンケーキにフォークを刺して最後の一口をほおばった。


 【注】登場人物の名前や店名は架空のものであり、実在の人物、店舗とは全く関係がありません。-

【誕生月石】
ここでは、登場する7月について
7月 誕生石 ルビー、スフェーン 
・ 誕生守護石 インカローズ ホワイトハウライト

7月の誕生石は宝石の女王 ”ルビー” です。
ルビーは、赤色宝石ではもっとも高価な天然石の一つでコランダムという鉱物の仲間です。コランダムの仲間にはサファイヤがあります。コランダムは含有成分でいろいろな色が存在します。青い石からオレンジ、緑、黄色、レインボー、バイカラーなどありますが、クロムが含まれて赤くなったものだけをルビーと呼びます。
最高級の鮮やかな赤色は「ピジョンブラッド(鳩の血)」と呼ばれ非常に高価です。
石言葉:情熱、良縁、勝利、不滅の愛
パワーストーンとしての効果は、持ち主のエネルギーを高める。困難に打ち勝つ自信を作る。勝利をもたらすお守りとされます。

誕生石を知りたい方は、こちらの参考サイトもどうぞ
【出展】366日の誕生石
https://differencee-jewel.com/daily-birthstone/

星座の石:かに座の星座石は”パール”、”ムーンストーン” 後半のしし座の星座石は”ペリドット”、”カーネリアン”、”サンストーン”があります。

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6月 仮面の下の微笑 ~ 第6話


6月はジューンブライドとかいうが、雨の季節でじめじめして実はイベントをするにはあまり相応しくない季節だと陽子は思った。
陽子という名前のわりに、彼女は雨女だった。なにか大切なイベントがあるときは朝とてもいい天気だったのに本番時間になると必ず雨が降る。
イベント会社のプランナーには向いていないと何度も転職を考えたことがある。
でも続けているのは、こういう企画の仕事をして周りの人を幸せにするのが楽しいから。

今日は、友人の智美の実家で開かれる仮面舞踏会のイベントに招待されていた。
この企画は、智美の20歳の誕生日のお祝いをするのになにか企画を考えてと陽子が頼まれ、「では、立食形式で仮面舞踏会風にしては?」と提案したところ、彼女の父親の雄三が面白がって鎌倉にある知り合いのパーティースペース会場を借りて実現することになったものだ。
招待状をもつ客だけしか入れないので、顔がわからなくても変な人が紛れ込むことはない。

「結婚式場にも使うところだからおしゃれねえ。」
そういったのは、同じくイベントに招かれている智美と一つ上のいとこである亜里沙だ。
智美の家族は大会社を経営する父親と継母の由美、義理妹の博美。智美の実母は体が弱くずっと入院していたが
5年前に亡くなった。長年専属の看護師をしていたのが今の母で博美を連れて父と2年前に再婚した。
継母はどこか控えめな性格で智美との間には何となく距離感があった。

「もう3時ね。智美さん、お客様がもうすぐいらっしゃるわ。二階で早くお父様にいただいたドレスに着替えて。アクセサリーも忘れずにね。」
「はい、由美さん」
そういった後、控室に陽子を伴って入った。
ドアを閉めると白いドレスに着替え始めたが、智美の顔は少し暗かった。
「どうしたの?そんなきれいなドレス着て浮かない顔ね」
陽子はおどけていった。
「うん、、、実は数か月前から変なことが続いていて。」
「変な事?」
「うちのベランダの鉢植えが落下してきてもう少しでケガするところだったの。
数日前には近所をうちのベンつれて散歩させてたら、車がわき道から飛び出してきて危うくひかれそうになったの。ベンが吠えてよろけて転んで擦り傷で済んだんだけど、そうでなかったら大けがだったわ。」

因みに、その時の車はそのまま逃げてまだ見つかっていない。

「父が心配して今日は探偵さんを雇って会場に入ってもらっているらしいの。」
「ええ、お父様から聞いているわ。でもだれかまでは教えてもらっていないんだけど。」
そろそろ時間が近づいてきたので、智美は用意されたネックレスをつけ仮面もつけた。
「素敵なネックレスね。特に真ん中の青緑の大粒の石は指輪と同じ色ですごく素敵。」

ドアをあけて階下に向かうとお客はだいぶ集まってきていた。
みんなドレッシーな服装に思い思いの仮面をつけている。
陽子も知る智美の同じ大学の友人も何人か招待されてきているはずだが、ぱっと見では仮面のせいでよくわからなかった。みんなキャンパスではラフなジーンズが多いからなおさら見慣れた格好でないせいでしょう。
給仕の人は区別がつかないといけないので、男女別で同じ格好で仮面はつけていない。

主役の智美だけはわからないと困るので、開催の挨拶がてら父親が階段の半ばで紹介した。
ガラス窓越しの日の光のもと、青緑のネックレスがスタイルのよい白いドレスに映えてきれいに輝いていた。
始まってしまえば、この大人数だ。すぐにだれがだれかわからなくなるだろう。
シャンパンが並べてある傍の司会スペースに立っていると、若い女性が話しかけてきた。

「今日の姉さん、素敵なネックレスつけてきれいだったわね。サファイヤかしら。」

みると、智子の付けているのとよく似た赤いネックレスをつけている博美だった。

「白いドレスお揃いでかわいいわね。」
「でも私のネックレスは、ルビーじゃないわ。イミテーションなの。まだ子供だからって。」
博美は、唇を噛んで不満そうに言った。
「おかあさんは、もっとちゃんとした石をと言ったらしいけど、父さんに反対されたんだって。」
「お酒が飲めるようになってからね」
隣に来ていた亜里沙が博美に話しかけた。
博美はぷいっと横を向いて何処かへ行ってしまった。

「博美ちゃんまだ未成年だからお酒飲まないように見張っててね。」
「ええ、そういえば亜里沙さん今日は智美や博美ちゃんと同じ形の白ドレスなのね。アクセサリーも似ているわ。」
「親戚のものはみな同じ白ドレスで揃えるようにいわれたのよ。それぞれアクセサリーは違うけどね。」
亜里沙の同形のネックレスは、智美のものに似た青だがもっと深青色だった。たぶんブルートパーズだろう。

歓談のなか、パーティーは進み楽団が入って演奏会が始まった。日は暮れてきたので館内にはろうそくも灯され、シャンデリアで音楽会にふさわしいようになった。
何曲か管弦楽アンサンブルの演奏が終わった頃、突然女性の甲高い悲鳴が聞こえた。
陽子は驚いて悲鳴のした方へ向かう。そこには白いドレスに青いネックレスをつけた女性が倒れていた。倒れた時持っていたであろうワイングラスがわれて周囲に散らばり、そのワインが服にかかっていた。

「智美!」

陽子は叫び、倒れた若い女性に近づいた。隣にいた男性が脈をとり「死んでる」と呟いた。
陽子は仮面をはがしてあっと驚いた。
それは智美ではなかった。倒れていたのはいとこの亜里沙だった。

警察が呼ばれ、みな事情聴取を受けたあと何名かはその場に残るように言われた。
残された全員が一か所に集められ、担当刑事が陽子に質問した。

「なんであなたは殺された女性を智美さんと思ったのですが?」
「だって、最近誰かに狙われているみたいな話しを智美から聞いていたし、着替えでみていたのと同じ白いドレスと青いネックレスだったから。」

その後同席していたある青年が「西洋館宝石殺人事件」としてニュースで騒がせた事件のあっと驚くべき犯人と真相に気づき事件は解決するのだが、その謎ときは別の話で。

・・・後日談は、別のページで改めて書きます。

 【注】登場人物の名前や店名は架空のものであり、実在の人物、店舗とは全く関係がありません。

【誕生月石】
ここでは、登場する6月について
6月 誕生石 真珠、ムーンストーン、アレキサンドライト 
・ 誕生守護石 タイガーアイ

6月の誕生石はシックな石が選ばれています。
真珠は、女性の美や健康、長寿を象徴する丸いアコヤガイが生み出す石。
ムーンストーンは長石で月光のような神秘的な輝きを放ち、愛の予感や純粋な愛、直感力を高める石。
ここにアレキサンドライトが入ったのは、ごく最近の2021年12月20日です。
「昼はエメラルドグリーン、夜はルビーレッド」のように、光の種類によって色を変える希少な宝石として知られています。
今では1カラット(約0.2グラム)以上の宝石質のものはほぼ採れません。
ラボ合成石も存在します。
(注)太陽光(昼)の下で鮮やかな「青緑色」を示し、白熱灯やろうそく(夜)の下で艶やかな「赤紫色」を示す

誕生石を知りたい方は、こちらの参考サイトもどうぞ
【出展】366日の誕生石
https://differencee-jewel.com/daily-birthstone/

星座の石:ふたご座の星座石は”アゲート(めのう)”、”アレキサンドライト”、”ラリマー”、”シトリン”、”アクアマリン” 後半のかに座の星座石は”パール”、”ムーンストーン”があります。

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5月 緑柱石と南海のラグーン ~ 第5話

皐月(さつき)は深呼吸した。
乾いた空気が鼻孔の奥にながれて体中の空気の湿度を半分は消し去っていった感じがする。

南カリフォルニアは、日差しが日本より強くサングラスが必要だ。
澄み切った青空とサンタモニカの海を見ながら、先月までいたバリの海を思い出していた。

日本と違って赤道直下のあの島は、日本の夏のように熱く湿気も結構ある。昼に外を出歩くのは
結構体力がもっていかれる。すぐにカフェに入って休まないと体が持たない。
南国のカフェを吹き抜ける風は周りの田んぼの景色と相まって気持ちよさが先に来る。
日本より暑苦しさを感じることがない。「ヤシの木が田んぼの中にあるのがいいのよねえ」。

幹線はアスファルトでも裏道には土の道が多く、南国のヤシやカラフルな花の木の緑が暑さを和らげてくれている。
バリで買ったTシャツは直ぐに汗ばんでくる。肌ざわりはいいのだが綿生地が薄いせいか吸水性はいまいちだ。ラグジュアリーホテルに泊まれば、基本プールがあるので海まで出なくてもよい。

泳げない皐月にはスキューバで海の中を亀やイルカやマンタと泳ぐなんて選択肢はない。
でも熱帯魚のなかでプカプカ浮きながら位は経験してみたい。
「昨日のレンボンガン島でのシュノーケリング、楽しかったな」。

サヌールエリアからでる船でのバリ島とレンボンガン島への離島とマリンアクティビティは、近場であるが結構楽しめるツアーだ。
実はこの海峡は意外と流れがはやく潜って流される海難事故もなんどか起きている。
実績があり、スタッフがちゃんとしているツアーを選ぶことが大事で全く泳げない人もちゃんとかまってくれるところだと安心して魚の群れを見ていられる。
昼休憩のあとマングローブをカヌーで進んでいくのものんびりしていい。
この辺りのマングローブは若く危険なワニなどはいない。緑のラグーンはエメラルド色でカヌーから見るマングローブ林も明るい。たまに海に入ってサンゴ礁を越えながら船を進める間も晴天が続くのどかな一日だった。

一緒にマリンスポーツを楽しんだ友達が、デンパサール市の宝石市場へいきエメラルドを買ってきたと言っていた。帰国通関時に皐月は憂鬱だった。

兄の悠介が5月の連休前にタイから帰ってくると伝える母からのメールを何度も見てはため息がでる。

小さい頃から大人しい性格で京都大学に進んだ後、突然中退してタイに行くと言われた時親はカンカンだった。

暫くして宝石のバイヤーになってそれなりに成功した雑誌の記事を送ってきた時、それを嬉しそうな顔で読んでいた母の顔に少し怪訝な色が浮かんだ。そこにはインタビューを受ける綺麗な女性が映っていた。「会社の社長さんかしら。」悠介の顔を写真のスタッフの中から探したが、それらしい顔がない。もう一度見渡した後、母の目が文字通り飛び出すように大きくなり突然気を失った。
びっくりした皐月は、母をそのままソファーに寝かせしばらく横にすると救急車を呼んだ。

待っている間、皐月も送られた記事に目をやったが、最後のページの現地から写真を送ってきたのを見た時なぜ母が気を失ったか気づいてしまった。インタビューをうける社長と思われる人物は、皐月のよく知る人物を彷彿させる。これは、兄だ! 兄の面影が残っていた。

母は一週間寝込んでしまった。

4月の終わり、兄の帰国便が羽田につくということで、皐月は出迎えに空港にいった。
到着ロビーで待っていると、写真で見た女性が前から歩いてきた。周りがどこのモデルか女優かと振り返る。
『うわー、なんてスタイルいいの』

「悠介兄さんお帰り。荷物は?」

「検疫で申告が終わったら先に銀行の貸金庫によってタクシーで帰る。皐月も付き合って。」
タクシーで皐月は気になっていたことを尋ねた。
「声変わったんだね。胸私より大きくなって。もしかして?」
「ええ、向こうで完全に性転換手術したの。もう女性よ。今回の帰国は戸籍の変更手続きをするためでもあるの。
これからは“悠子”姉さんて呼んでね。」

写真をみたあとメールでやり取りしていたので、自分は気持ちの整理はできていた。

「私、向こうに着いた頃ジュエリーの仕事に関わって最初は何度かだまされたわ。しばらくしてから鉱山で採掘の仕事もした後に宝石の勉強をして鑑定士になった。そのころから石を持つと真贋ってなんとなくわかるようになったのよ。その実績を認められて会社も大きくできた。今回日本でジュエリーショーも開くのよ。あなた宝石ショップに勤めているのでしょう。手伝ってくれる?」

そういって悠子は、お土産といって緑色の3つのルース(裸石)を見せてくれた。気に入ったものをネックレスか指輪にしてあげる、どれがいい?」と聞いてきた。

出された石は2ct位あるルース(裸石)でどれもきれいな緑色だった。
貸金庫を借り大方の宝石をしまうと、一度明るい白い現代風のカフェに立ち寄った。
そこで改めて、さきほどの石選びをしろと言われる。皐月も仕事柄石には多少知識がある。


「この一番目の石は色が濃いしインクルージョンも少ない。含侵処理したエメラルドかしら。
二番目は色が海の色みたいな薄さできれいな四角いエメラルドカット多少インクルージョンがあるけど透明できれい。
三番目は、同じエメラルドカットでインクルージョンがみえるけど濃い緑。
変に軽かったりするもの全くの傷なしじゃないからちゃんとした石みたいだけど2番目かしら。」

「どれがエメラルドだと思う?」
「全部エメラルドなんじゃないの?」
「ふふ、まだまだね。私鉱山でずっと石の声を聞いてきたのよ。最初に石の自己紹介を聞いてみる事ね。
次にお化粧している前の素顔を見て、最後に石の性格よ。」
「えーそんなのは鑑定機使わないとわからないわよ。」

「エメラルドは、ベリル鉱物でしょ。コランダムのサファイアともちがう。ガーネット、クロムダイオプサイト、トルマリンとは組成がちがう。持って帰ってよく見てみなさい。」

ケース変えてわからなくしちゃうかも、と皐月はわらった。
服変えたってわかるわよ、たとえ別の石をいれてもね、と冷たい目で悠子はいうと石を渡してきた。ホテルの一室で悠子は明後日の展示会に思いを馳せていた。
「いよいよあさってね。ジョージ待ってなさい。」
展示会場は華やかな光で着飾った人々でにぎわっていた。
悠子のブースは雑誌に載ったせいで話題になっておりカメラマンが集まっている。
スタッフは会社からの1名に皐月ともう一人、前日自分だけで不安だからともう一人を呼んでいい?と皐月がお願いし顔合わせをした子だ。

「初めまして、留依です。」とあいさつされた悠子は一目で気に入り、優しそうに眼を細めた。
「悠・・・、姉さん、この子もいい?」不安そうに聞く皐月に
「ええ、この子ならいいわ。」

先ほどいろいろな赤いガーネットだ、と見せた時、混ざったルビーとサファイアを「違う子が混ざってます」と一目でより分けた留依に「なぜそう思うの?」と聞いたのに即答で、
「え、全然違うじゃないですか?」と不思議そうに答えた子だ。

皐月が、「よくUV判別しないでわかるわね。」というと「紫外線当てたってガーネットとはかぎらないわよ」
という留依に悠子は満足そうにうなずいた。
「同じガーネットだって産地が違えば別物でしょ。例えばこれとこれ」という留依を悠子は驚きの目でみた。
たしかに産地毎の特徴はあるが、見ただけで判断するのは非常に難しい。
自分が長年タイにいる恩人の師匠からうけた修行と経験でわかる事を簡単に言い当てられて、この子の感性は天性のものだとわかる。

「トメちゃ・・・留依は石に関しては特別なの。以前私が勤めていたお店で盗難事件があったとき私が疑われたんだけど、その場で解決して助けてくれたのが彼女なの。」
「皐月、いい友達もったわね。」

会場から数時間経ったころ、入口が少し騒がしくなった。
有名トレーダーのジョージだった。
何人かの知り合いに挨拶を済ませたあと悠子のブースまでやってきた。

「ご活躍は雑誌でみたよ。君みたいなきれいなお嬢さんが活躍しているのはうれしいね。冴えない素人野郎がいっぱしの業界人気取りで仕事しようとする子もこの業界も多いからなあ。」

「ぜひいくつか見ていってください。みなさん、今日は特別に鑑定チャレンジをやります。
今日商品をご購入いただいた方の中でこの宝箱に並べた石の名前を書いて見事全問正解の方には、こちらに用意したルース(裸石)からどれか一つ気に入ったものを差し上げます。」

会場が「オー」とざわめいた。
悠子はこの業界ではちょっとした有名人だ。彼女のセレクトのなかに櫃の悪いものがあるわけがないとみんな知っているからだ。

「どうです? 何か買っていただけたらジョージさんもチャレンジできますよ」
「いやいや、せっかくのイベントなのに私が参加したら興ざめだろう」
するとジョージと一緒に来ていた若い男性が声をかけた。
「じゃあ、僕があそこにあるダイヤの指輪から一点買います。今度結婚する彼女にぜひ“ブルーフェアリー”の指輪買ってきてと頼まれていたんです。
“ブルーフェアリー”は悠子の会社が展開するジュエリーブランドだ。その高いデザイン性はアメリカや日本の一流企業に勤める若い女性の間では人気が高い。
悠子はにこやかに微笑むと、その男性を案内し展示されている指輪を出してきていくつか見せた。
「今ダイヤはお買い得ですよ。人工ダイヤが出回っているので結構お手頃価格でご購入いただけます。」
もちろん弊社の鑑定付きのものには天然石しかありませんけどね、とフフフと笑いながら数点品物を薦めた。
その中からこれがよさそうだと男性が選ぶと、悠子はお礼を述べ商品を皐月に包装させた。

「では、鑑定チャレンジはどうされますか。ご自身でもけっこうですよ」

「いえ、せっかくだからジョージにやってもらおうと思う。おねがいできますか。」
ジョージは責任もたないよ、まあ間違えようがないけどね。と言い大げさに笑うと男性に向かい承諾した。
悠子の口元が少しだけ歪んだ。
「では石をご用意させていただきます。少しお待ちくださいませ。全問正解の暁にはその中から一つ選んでくださいね。」
そういうと、バックヤードにある箱をもってくるように皐月に耳打ちした。
しばらくして、皐月は5つの箱が入ったケースを持ってきた。
皐月はすべての箱をあけ中の石がみえるようにした。
「せっかくのプロの鑑定なのですから、産地も一緒におねがいしますわ、鑑定の成否には含めませんけど。道具をお貸ししましょうか。」
ジョージは一瞬はなじろんだ(鼻白んだ)が、「それくらいは朝飯前だよ。私を誰だと思っているのかね。」
というと、さっそく鑑定を始めた。
真剣にしばらく見ていたジョージだったが、フーと息を吐くと
「1から3と5はエメラルド。4はクロムダイオプサイド。2は人工だね。1と5はアジアだね。3はもしかしたらコロンビア?ではないようだが。。。品質は結構よいものがそろっている。3が一番かな。3をもらうよ。」
「さすがですわ、すべて正解です。」
まわりから大きな拍手がおきた。

「さあ、これは君のだ」、とジョージは男性にその石を渡した。
嬉しそうに受け取った男性になにか悠子が言おうとしたその時、留依がなにかを落とした。
留依の方を見た悠子は、突然目を見開いて硬直したように静止した。

皐月が留依をみたとき、皐月も同様に固まった。彼女の眼が怖いくらいの光を放ち、悠子を見つめていたからだ。

ジョージと男性は楽しそうに話をしながら別のブースへ去っていった。
閉店後、後かたずけをしている時も悠子と留依はなにもしゃべらなかった。
皐月もなにかを聞ける雰囲気ではなかった。

一か月ほど経ったころ、皐月は留依と喫茶店でお茶をしていた。
その数日前に悠子は石の買い付けのためスリランカへ出かけた。

バスクチーズケーキを食べ終わると、皐月はおもむろに留依に聞いた。

「ねえ、先月のショーで最後になんで悠子さんをみていたの。なんか怖かった」
留依は
「そうねえ、悠子さんが”あのたくらみ“を実行していたら、石に嫌われちゃうんじゃないかって
思って。まあ・・・思いとどまってくれたみたいだから。」
「“あのたくらみ”って何?」
「またいつか教えてあげるわ。あなたが石の声を聞けるようになったら」
「それじゃいつになることやら(笑)・・・」

— (ジョージと悠子の因縁話はまた今度。。。)

・・・後日談は、別のページで改めて書きます。

 【注】登場人物の名前や店名は架空のものであり、実在の人物、店舗とは全く関係がありません。

【誕生月石】
ここでは、登場する5月について
5月 誕生石 エメラルド、翡翠 ・ 誕生守護石  マラカイト

エメラルドはべリルという鉱物の仲間でクロムやバナジウムに由来する鮮やかな鮮やかな緑色をした石。
モース硬度7.5~8と比較的硬い宝石です。
インクルージョン(内包物・キズ)があるためオイル浸透処理がされることが多く、ノンオイルな石は希少性が高くなります。
ノンオイルで鮮やかな透明な緑かつ傷が少ない大きな石は高価になります。

誕生石を知りたい方は、こちらの参考サイトもどうぞ
【出展】366日の誕生石
https://differencee-jewel.com/daily-birthstone/

星座の石:牡牛座の星座石は”エメラルド”、”翡翠”、”ローズクオーツ”、“マラカイト”。後半のふたご座の星座石は”アゲート(めのう)”、”トパーズ”、”シトリン” 等があります。

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4月 桜の季節とピンクダイヤモンド ~ 第4話

藤次郎は衣笠山にもほど近い平野神社を散歩していた。
「枝垂桜ももうすぐ満開やなあ」 京都にも桜の季節がきました。
桜は日本を代表する花のように言われてますが、日本で「花は桜」とイメージされるようになったのは平安時代以降。奈良時代は梅こそ愛でる花でした。古今和歌集が編纂された頃には花といえば桜が和歌に詠まれるようになりましたが、現代の桜の代表であるソメイヨシノは江戸時代以降のもの。

2025年に“京都人の密かな愉しみ“というTV番組(NHK)で定期化して流れるようになった ”Rouge”編 でも桜のシーンで山桜や枝垂れ桜がでてくるのは京都らしい。

京都を舞台にしてるからと言って、でてくる俳優さんが全部京都人というわけやない。
でも太秦で長年仕事している俳優さんもいてるので、京都弁がうまい俳優さんもいらっしゃる。
大阪の俳優さんもいろいろ出ているが、そのほうが大阪弁が身についているので苦労が多いのとちゃうやろうか しらんけど。

京都はいろいろな桜があり3月の下旬から4月下旬まで咲き乱れるのが楽しみのひとつ。

一番遅いのは、仁和寺の御室桜であろうか。
「わたしゃお多福 御室の桜 はなが低うても 人が好く」
と歌にもなっている。

藤次郎は、手が届くところで花が咲き、色白のきれいなこの桜を特に好んでいる。
「ソメイヨシノは、色がこいーて品がないなあ」
今年は、息子の義男に遅い春が来た。結婚相手の娘さんとは秋には式を挙げ東京へ移り住む。
息子に婚約指輪をどうするのか聞いたら、妻の静子が指輪を譲るので、それをリフォームして使うのだという。
相手の家は結構な資産家で新たに買うと貧弱になってしまうのは避けたいという事だった。
当時宝石を扱う貿易会社にいた藤次郎は、縁故ではあったがそれでも大枚はたいてダイヤモンドの指輪を送った。
取引先だったオーストラリアのアーガイル鉱山から産出したピンクの色が濃い大粒のダイヤだった。
妻は最初ダイヤだとは思わず、ダイヤだと聞いて目を丸くして驚いたのを覚えている。
特別価格で買えたが、そうでなければ藤次郎にはあれほどの石は買えなかっただろう。
いまは閉山してしまったため、希少性が高くなり値は爆上がりしているようだ。

「あんまり見え張ってもしょうがないけどなあ」

「おじさん、こんにちは」 玄関から若い女性の声が聞こえた。
横浜の親戚のとこの留依ちゃんだった。

「ようお越し、久しぶりやなあ。今回は何の用で上洛したんかいな。」
「父さんの知り合いが大阪のミネラルショーに出展するんだって。それでね裕二朗おじさんの石をぜひ目玉商品として置きたいと拝み倒されて父さんが口利きしたんだけど、『展示写真を撮るなら和彦兄いのスタジオで』と裕二朗おじさんが言ったので撮影するサンプルもってきたの。2,3日泊めてね。」
和彦とは裕二朗の次男で写真家である。
小さいながらスタジオをもっていて関西ではジュエリーフォトグラファーとしてそこそこ名がしれている。
「魔法使いの石なら客寄せには文句なしやな。」
裕二朗は母方の親戚だ。昔宝石業界に関わっていたので裕二朗の評判はよく聞いて知っている。
「どうせなら、一緒にマドモアゼル・トメの魔女の館も出したらどうや。」
「おじさん、わたし占い師にはならないって言ってるでしょ。それにマドモアゼル・トメって何よ。
どうせなら“マドモアゼル・ルイ”でしょ。」

藤次郎は、飲んでいた京焼の湯吞茶碗を見てふと思いついたように言った。
「ちょうどお茶請けの菓子が切れてて近所のお菓子屋さんまでつきおうてくれへんか。」

すぐ近くのお菓子屋というその店は老舗のような趣がある和風建築の小さい店だった。
中にはいると、留依は明るいすっきりした白いカウンターの風情に面食らった。
「なにこれ、和菓子屋じゃあないの?」
どら焼きに見えたその菓子も抹茶とチョコのクリームを挟んだ洋菓子風。他もマカロンにあんずジャムやキンカンクリームといった和のテイストを全面にだしたものだった。
「ここは、古い実家の和菓子屋から暖簾分けした洋菓子と和菓子の融合をねらった新店舗や。店主は若い時から塩芳軒で修行してパリの“ル・コルドン・ブルー”で洋菓子の勉強したのち最近京都に戻ってきたんや。まだプレオープンみたいなもんや。」

留依はショーウインドウにある一つのお菓子に目がいった。それは桜色の「クリスタル・桜」と銘打った角ばったごつごつした物だった。
桜色の濃い透明な羊羹のような出来だが、留依にはなにか違和感があった。
「これ最初は春らしい名前できれいって言ってもらえるんだけど、人気なくてね。」
「味みてみないとなんとも言えないけど、野暮ったく見える。」
留依の一言に、じゃあとその場で出してくれたお菓子を二つに割って食べてみる。
「味はまあおいしいわ。でもこれクリスタルじゃないわ。」
「え?」
「クリスタルの真価は、こうするとわかるの。」
そういって留依は、お菓子に照明を当てて「ほら透け感が低いでしょ。」
光を当てると、断面は羊羹ぽい曇りが強調された。
「ピンクダイヤもピンクの濃い色が好まれるんじゃないの。薄くても透明感がある方が高級さがあるわ。」
「なるほど、桜色と言ってもウバ桜、山桜、ソメイヨシノ、色はいろいろあるわな。私の好きな御室桜は白うてもあれも桜色や。」
店主は、なにか思うところがあるようでじっと考え込んだあと「光をうけてこそジュエリーの輝きか」とつぶやき、挨拶もそこそこに奥へ引っ込んでいった。
藤次郎は、なにもいわず店をでた。

「もうすぐ、フランスのお師匠さんが日本にくるそうなんや。それで日本らしく「クリスタル・桜」をつくって出したんやけど評判がいまいちで頭抱えていたみたいなんや。」
「私も相談されたときになにか足りないと思ったが、いいアドバイスができなくてね。
いや、流石は「マドモアゼル・トメ」だ。」
「おじさん! ル・イ・です。フランスの王様と同じ ルイ!。」

一か月して京都新聞に“フランスのパティスリー界の至宝 MOF ○○氏も絶賛! 和菓子と洋菓子の融合「クリスタル・SAKURA」”の記事が載った。
SNSでも大評判で、店は連日売り切れとのことだ。

藤次郎は、店主が改良された「クリスタル・SAKURA」を最初に出してきた日のことをよく覚えている。
色は白に近くなり、LEDの照明光を浴びて以前より小ぶりだが透きとった中に桜の葉型の餡が小さくはいっている。
2つに割ると、断面がキラキラと光った。ザラメ上の粒が真ん中に仕込まれているのが光に反射してクリスタルのように輝いている。
「ええ出来や。」
「みんな藤次郎さんのおかげです。」
「いや、これも「白夜の魔法使い」の導く“縁(えにし)“なのかね。ちょうどあんたが暗い顔して悩んで鬱になっていることを聞いた後にタイミングよく裕二朗くんが留依を京都に呼び、あんたの悩みにヒントを与えた。でもそれを形にしたのはあんたの努力や。近所においしい店が増えて甘いもの好きの私もうれしい。」

藤次郎の手元には、過日の京都新聞の文化欄の写真付きの記事。フランスから来た○○氏と店主の肩を組んだ満面の笑顔の下に「クリスタルSAKURA」と共に光を浴びたホワイトウオーターのクリスタルが置かれていた。
 
【注】登場人物の名前や店名は架空のものであり、実在の人物、店舗とは全く関係がありません。

【誕生月石】
ここでは、登場する4月について
4月 誕生石 ダイヤモンド、モルガナイト ・ 誕生守護石 水晶

ダイヤモンドは昔は宝石の王様といわれエンゲージリングにつかう石の代表格でした。炭素(C)からできたモース硬度10と一番硬い宝石です。
硬いのは割れにくいということではなく、一定の面に沿って割れやすい性質(劈開性)を持つため、急激な瞬間的な力に対しては、割れることがあります。
天然ダイヤといまでは人工ダイヤも存在します。ともに炭素でできた結晶体です。二酸化ジルコニアでできたモース硬度8.25~8.5のキュービックジルコニア(CZ)や炭化ケイ素(SiC)を主成分とするモース硬度9.25~9.5のモアッサナイトはともに人工石であり”ダイヤモンド”とは別組成の石です。
なお、よくダイヤの代わりにファンシーアクセサリーとして使われる人工石のキュービックジルコニアと天然石のジルコンはまったく別の石で、ジルコン(ZrSiO4)は12月の天然石です。
宝石としてのダイヤはGIAという機関が4Cという独自の基準で鑑定を行っており、世界的な統一基準ができあがっています。

誕生石を知りたい方は、こちらの参考サイトもどうぞ
【出展】366日の誕生石
https://differencee-jewel.com/daily-birthstone/

星座の石:4月19日までの牡羊座の星座石は””ガーネット”、”ルビー”、“インカローズ”等があります。後半の牡牛座の星座石は”エメラルド”、”翡翠”、”ローズクオーツ”、“マラカイト”等があります。

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3月 青い湖のほとりで  ~第3話

夏の終わり、真紀は、湖畔で一人すわって泣いていた。
先日、3年付き合った太郎と破局しその時妊娠していたのに堕さざるをえなかった。太郎の家は裕福だった。付き合い初めにダイヤのネックレスもおくってくれるくらい。1ct(カラット)位のそれなりの大きさのダイヤモンド。真紀の幸せの象徴だった。
でも彼は二股をしていて、資産家のお嬢さんと婚約がきまると簡単に捨てられた。

湖畔の“縁 えにし”という名のジュエリーショップ。
「これ、ルービックジルコニアですよ。二酸化ジルコニウムで炭素でできたダイヤとは違います。いわゆる模造ダイヤとかでダイヤと偽って悪徳業者が販売したりするやつです。」
だまされていた。「私に見る目がなかったんだ。」
また、涙がでてきた。
ガラン、ガラン。
入ってきたのは、高校生くらいの麦わら帽子をかぶった女の子。
「おじさん、お父さんのお使い。頼まれていたサンゴだって。」
「おー、留依ちゃん。お使いご苦労様、遠いところご苦労だったね。」
店主は真紀の方を振り返ると、一緒に見るかい?と誘った。
箱を開けるとガラスケースにはいった見事なサンゴの木だった。
「知り合いの旅館が玄関に置くのに枝ぶりのいいサンゴを探していてねえ。サンゴは子孫繁栄、家庭円満の証でカップルやご家族連れが多い和風旅館にはぴったりだとぜひ見つけてくれって頼まれていたんだよ。」
「父さんがこれはめったにない一品って自慢してたからね。濃淡のピンクが鮮やかで気持ちが華やかになるわ。」
真紀の目にもそれは見事なサンゴだった。
「お客さん、ダイヤだけが宝石じゃない。サンゴは厳密には元生物だけど、宝石としても珍重されますね。
こちらにサンゴのネックレスもありますよ。小ぶりだけど、なかなかきれいでしょ。」

表にマリンブルー色のワンボックスがとまった。
ガランガラン、ドアベルをならして別の客が入ってきた。
「あー真治さん、いまお宅の旅館にあうサンゴが入ってきましたよ。」
「ほー、とてもいい品ですね。母さんが喜びそうだ。トメちゃんが持ってきてくれたの?」
真治は、近くの旅館の次男坊で近くで旅館を時々手伝いつつ、キャンプ場で仕事をしている。
この湖にきたときの定宿で家族とも何度もとまったことがあるから、真治とは顔見知り。
真治は、ふと真紀の方を見た。「お客さん、この近くにキャンプ場があるんです。お客さんも一度どう?。最近ソロチャンプ流行っているんすよ。」
「おい、真治くん。自分の旅館を進めるのが先だろう。それに若い娘さんに“ソロキャンプ”はないだろう。」
真治は、自分の言った言葉の意味に気づいて赤くなった。
「ごめんなさい。いまソロキャンプ流行っているんで、つい。カップルでも、グループでも楽しいですよ。」
「いいえ、いいんです。わたし彼氏いませんし。友達もそんないないから。」
「なら、トメちゃんに彼氏ができる石を選んでもらったら。こいつ本名は留依っていうんだけど、周りからは「石のことなら、宝石からパワーストーンまでトメちゃんに相談しろ。と言われるくらい。こいつの選ぶ石は本物だから。」
「真治さん、わたしパワーストーンや占いやらないって言ってるでしょ。」
「まあまあ。 お客さん。トメちゃんに涙の訳を話してみたら。誰かに話聞いてもらうって、気持ちが楽になるよ。」
真紀はびっくりした。真治が店に入ってきたとき、ほほに残る涙を見られていたようだ。
店主も「奥の席使っていいよ。彼女に話して気持ちが楽になるだけでも儲けものだよ。うちも話の流れでなにか買ってもらったらうれしいし 笑。」
冗談だといいながら、奥の席を真紀と留依にすすめた。「いまお茶持ってくるね。いいアッサムがあるからミルクティーにしてあげるよ。」

真紀は、自分が二股かけられ別れたこと、そのとき中絶したことまですべて留依に話した。
はじめてなのになぜかこの子には何でも話して問題ない…そんな気にさせる不思議な目をしている子だと感じた。店の中に漂うやさしい空気もそんな印象を後押ししたのかもしれない。

「でもお医者さんには、若いからまだ産めるって言われたんですよね?。改めてしあわせな家庭をつくるのに遅すぎることなんてないですよ。
・・・ねえ、時間があるなら真治さんがやってるキャンプ場にとまっていったら?バンガローもあるから何も持ってきてなくても一泊位していけるよ」

そういうと、留依は外の車のところにいた真治のところへ向かった。ちょうど店に届けに来た薪をかたずけて今帰ろうとしている。
「ねえ、真治兄い お客さんがバンガロー泊まりたいらしいけど空いている?」
「毎度あり(笑)。この季節は大丈夫。。。」
店に戻ると、真治は真紀に握手してきた。
「お客さん、虹色バンガローへようこそ 真治です。」
「真紀です。急ですいません。ご迷惑でなかったですか」
「客が減る時期だから、逆におお助かりですよ」
荷物はすこしだからというと、真治は車でバンガローまで送っていくと真紀を助手席にのせて走り去った。

遠ざかる空色の車をみながら、二人並んだまま店主の裕二朗は小さな声でぽつりと聞いてきた。
「珍しいね。君のほうから縁(えにし)をつくってあげるなんて。」
「おじさんこそ、わざわざ私に話を振ってきたでしょ。」
「なんかね、サンゴが呼んでいるような気がしたんだ。」

裕二朗は実はネットの石の世界では『白夜の魔法使い』と呼ばれる有名人だ。
裕二朗の売る石は縁を結ぶ神秘のパワーストーンと呼ばれ、縁結びの依頼やビジネス界の有名企業人からはいろいろな相談も受けることが多い。
ただ、「ホワイトウオーター」というネットショップ商売に限定していて、東京の自宅はアルバイトの子がいるだけのため、湖で実店舗をやっていることを知る人はほとんどいない。本人は、『静かな湖畔の森の影でカッコウの鳴き声をきいて過ごしたい』と何処かの歌のようなことを言いながら隠者を気取っている。

「おじさん、あの人3月生まれってよくわかったわね。さすが”魔法使い”と言われるだけはあるわ。」
「へえ、あの子3月生まれだったんだ。道理でサンゴが呼ぶわけだ。」
「あの子最後は笑顔で車で去っていったね。」

〇年後、真紀は真治からプロポーズされた。
その指に贈られたのはアクアマリンの指輪。その翌年アクアマリンの石言葉のとおり、真紀は母になった。
 
【注】登場人物の名前や店名は架空のものであり、実在の人物、店舗とは全く関係がありません。

【誕生月石】
ここで登場する3月について
3月 誕生石 アクアマリン、サンゴ ・ 誕生守護石 ブルーレース

アクアマリンは、エメラルドと同じ「ベリル」鉱石の一種で淡いブルーの発色をもつ物を指します。水に由来するこの石は、ブラジルのサンタマリア鉱山で採掘されるものやモザンピーク産のサンタマリア・アフリカーナと呼ばれるマリンブルーのものが高品質が多いとされています。

誕生石を知りたい方は、こちらの参考サイトもどうぞ
【出展】366日の誕生石
https://differencee-jewel.com/daily-birthstone/

星座の石:3月20日までのうお座の星座石は”アクアマリン”、”モルガナイト”があります。後半の牡羊座の星座石は”ガーネット”、”ダイヤモンド”、”ルビー”、“サンゴ”があります。

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2月に降る雨、紫の慈雨

夕子は、先週末の夜も飲んだくれていた。
最近、コンペで他社に今一歩およばず契約を逃してやけ酒を飲むことが多くなった。傘もなくずぶ濡れで帰ってきた日もあった。
「向かないのかな」
そうそう夕子は、日本橋にある中堅の広告会社でWEBデザイナーをしている。
勤め始めた頃は、希望に満ちて契約もそこそことっていたが、最近は頭打ちで才能の限界を感じ始めた。
今日は、ジュエリー関係のクライアントのところに新作発表広告のプレゼンで横浜に来ていた。
でもクライアントの評価はいまいちで、今度のコンペ結果も怪しい。
今日も雨。小雨であっても2月の寒い日にはつらい。
元町を歩いていて、ふと一軒のジュエリーショップが目にとまった。ショーケースの品につられてガラスのドアを開けて誘われるように入ってみた。

カランカラン、かわいい鈴の音がして店内にはいるときれいな工芸品が陳列されている。
中には、かわいい猫や犬、ロボットなどをモチーフにしたペンダントが展示されている。
「いらっしゃいませ」まだ若い女の子の店員が笑顔で接客する。
買うつもりはなかったが、夕子の目に奥にある小さな七福神のアメジストが飛び込んできた。
掌に乗るサイズで、かわいい。
「きれいでしょう?」
確かに澄んだ紫の色と透明な部分のコントラストがきれいな置物だ。
「ばら売りもできますよ」
中でも琵琶を弾く弁財天がほっちゃりしてかわいい。
やや高めだったが、何となく惹かれるものがあった。
「お姉さん何月生まれですか?」
「2月よ」
「でしたら、誕生石ですね。アメジスト。」
「ここはパワーストーンのお店なの?」
「いいえ、特にパワーストーンを扱っているわけではないんです。あなたに合う石でブレスレットを作るとかもやってないし、占いもしてません。でもこんな置物をおいているからそう思って入ってこられるお客さん多いです。」
改めて少女をしげしげと眺めた。どことなく横浜風の異国情緒を感じる神秘的な雰囲気を感じる。
「でもあなた、占いやったら当たりそうな雰囲気あるわよ」
「そうですか。わたし本名は留依なんですけど、留めるに依りそうって漢字だからみんなからは“トメとかトメちゃん”って言われているんです。全然そんなエキゾチックなの似合わないですよ。」
「ふふ、変わっているわね。私は夕子って平凡な名前だから留依(ルイ)なんてあこがれるわ。」
「でも、トメですから。」
二人してクスクスわらったあと、夕子はふと質問してみた。
「ねえ、石って合わない石もつと不幸になるとかいうじゃない?なんとなく買うの怖いわ。
まあ、いま仕事あまりうまくいってないからこれ以上悪くなるとかないだろうけど。」
「お姉さん、不幸を石の性にしたら石がかわいそうです。石には個性があるけど、こいつを不幸にしてやろうと思っている石なんてありません。逆に私を幸せにしろ、そうじゃなきゃお前は悪い石だと思いを押し付けてしまうのも、かわいそうです。石をもっと見てあげてください。利害で見るのでなく、私の好きな色、素敵な形とか透明感、模様がいいわと感じて買ってもらうと石もうれしいですよ。
そんな風にみてあげると、石もインスピレーションや感謝を伝えてきますよ。」
そんな話を聞いてから弁財天の置物をみていると、なにか微笑んでくれたように感じた。
「ねえ、わたしデザインで行き詰っていて、悩んでいるの。あなたをみているとなにか落ち着いてくる。ねえ、私のところに来ない?」
なんだろう、心の琴線に触れるというのか、いままで直観なんて感じたことがなかったのになにか引っかかるものを感じた。
「これ買います。」
「ありがとうございます。」
会計をすると、少女は小さな紙を渡してきた。
「うち、ご購入いただいた石の石言葉を書いてお渡ししているんです。石と人ってマッチングアプリみたいなものですから、この子のタイプも少し知ってもらいたくって。」
書かれた紙には、こう書かれていた。

“アメジスト(紫水晶) 石言葉は「心の平和・癒し、直観を信じて」 たまには胸に押し当てて深呼吸してあげて from Rui”

夕子が大口の契約をとったのは、それから2か月後のことだった。
その日も雨だった。でも夕子には青い街灯に照らされた雨は幸せの紫に光ってた。
 
【注】登場人物の名前や店名は架空のものであり、実在の人物、店舗とは全く関係がありません。

【誕生月石】
ここで登場する2月について
2月 誕生石・誕生守護石 アメジスト



アメジストは、ホテルや旅館、石屋さんなどでドームや彫刻された大型のものも多く飾られています。
わたしは4ct程度のルースしか手元にないですが、実家には全面紫の
濃い細工の見事な七福神像が置かれています。

誕生石を知りたい方は、こちらの参考サイトもどうぞ
【出展】366日の誕生石
https://differencee-jewel.com/daily-birthstone/

星座の石:2月前半にあたる、みずがめ座の星座石は”アメジスト”、後半のうお座の星座石は”アクアマリン”、”モルガナイト”があります。

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1月の(柘榴)ザクロ

木石留依は中学の頃は友達からよく「トメ」、「トメちゃん」と呼ばれた。
周りの子が漢字の一文字目を見て、“うちのおばあちゃんと同じ“、とからかったのが最初で、いつしか本名のルイでなくみんなそう呼ぶようになった。
母の依子は“お母さんの実家の家紋はザクロの紋やったんよ。いまはみんな亡くなってしもて、だあれもいないんで使う人はいなくなってしまったけど。なんか残したかったんよ。実家のザクロの木はなくなってしもたけど。”

以前、ぽつりと母が漏らしたことだ。
それまでは、“あんたは1月うまれやから誕生石のガーネットと私の名前からとった”、なんて聞かされていたけどね。

私の家は、横浜の中華街近くで小さな宝石商をしている。だから小さい時からいろいろな石は見てきた。

私の1月生まれ。誕生石は、ガーネット。和名は柘榴石。ガーネットってとっても種類が多い石で大別するとAl(アルミニウム)系とCa(カルシウム)系に分かれる。
誕生石の由来になったAl系は赤やオレンジ、紫系。対するCa系は、緑系の色が多い。
古代エジプトではファラオの赤い石はガーネットだったと言われる。
”石屋のトメちゃん”だった私は、自然と石に詳しくなって周りから相談を受けるようになっていた。
いわゆる“パワーストーン“のことや“彼とうまくいく恋愛にきく石は何“といった事から”占い“まで。

なんか宝石商とパワーストーン屋を勘違いしている人がやたらと多い。
宝石とパワーストーンの業界は基本別の業界だ。
宝石は基本ブランド品だ。美しさや希少性が価値につながる。高価で投機にもなる。パワーストーンは、エネルギーというほんとかウソかわからないものを対象としている。
宝石として扱われるものもあるが、それ以外の石の方が圧倒的に多くある。
三大パワーストーンと言われる、スギライト、チャロアイト、ラリマーなんてホント模様石で透明なクリスタルな宝石とは別の世界の石だ。
誕生月で石を選ぶときパワーストーンとしての意味を考える人もいるが、恋愛運、仕事運、金運といった目的でパワーストーンを選ぶ方が多いだろう。

「トメちゃん、今度アクセサリー買いたいから浅草橋まで付き合って。」
学校の帰り道、若宮花から声をかけられた。花は私と同じシワシワネーム仲間だ。でも最近の若手女優に同じハナという名なの子もいるし、ダンスも習っていてクラスの子に人気がある。同じシワシワな呼び方の私とは違うのだ。

「石屋の子に商売敵の店についていけなんて、いい度胸じゃん。」
「だってトメちゃんの店高くて私には分不相応だから」
「わかった。マックでゆるす。でどんなのが欲しいの?」
「わたし緑色の石が好きだから、そんな色のピアスやネックレスがいいな。
エメラルドなんて高くて買えないからそれ以外で。」
「エメラルドでも宝石クラスでなければ手ごろな値段であるけれどね。
そうね、ペリドットみたいな薄緑な色も考えたけど、エメラルドを出してくるくらいだからもっと濃い緑色がいいのね。」
「白に映える緑がいいわ。」
今度小さな舞台で行われるコンテストで白い衣装を着るらしく、はっきりした緑のアクセサリーを身に着けたいらしい。

「だったら、ガーネットから探すのもいいかも」
「え、ガーネットって赤い色でしょ?」
「ガーネットでもグロシュラーと呼ばれる緑の石があるのよ。エメラルドグリーンなものもあるから
探せば、ピアスに仕立てられるものも見つかるかも。」

浅草橋の裏通り、ひっそりとたたずむ神社に先にお参りにいく。
「トメちゃん、結構信心深いのね。うちのおばあちゃんみたい。」
「わたしが、ルイなの忘れてない? インバウンドで日本にきている神社好きなフランス人みたいに宗教には敏感なの。」
「それじゃ観光できてる外国人みたいじゃん。やっぱり、宝石商よりパワーストーンショップの店長が似合ってるよ 笑」
「石って出会いなのよ。出会いを祈るは結構ガチよ。」
神様今日はいい買い物できますように・・・ この辺りにはいっぱいあるストーンショップへ向かうのであった。

数時間後:
「あーいっぱい歩いたね。」
浅草橋には、マックがないのでモスバーガーに入ってお茶していた。
テーブルの上には、かわいい小さな緑の石が3つつながったピアスとおそろいの色をした石の周りを透明な細かい石で縁取ったネックレスがあった。
「よかったね。グリーンガーネットだよ。情熱と勝利を意味する石。きっと今度のダンスコンテストはうまくいくわ。」
「ありがとう! 留依。これで私もっとがんばれる。5月生まれの私には誕生石でないのがちょっと残念だけど。」
留依はちょっと考えてからこう言った。

「ねえ、花。石には誕生日石っていうものもあるの。あなたの誕生日”5月30日”の誕生石は、実はグリーンガーネットなのよ。つまりこのアクセサリーはあなたのバースデーストーンってわけ。」
花は、大きな目をもっとまるくして留依を見つめた。

「だから、あなた緑の石がいいっていったときグリーンガーネットを探しましょうっていったの?」
留依は何もいわず、花の手を握って微笑んだ。花もただ嬉しそうに手を握り返した。
誕生日をしっかり覚えていてくれた親友の手を。
「自分は石屋の子であって、パワーストーンのジュエリーショップの店員じゃない。石に神秘を求めたり霊験を求めるのは少し違う」、
と、こんな話は普段はしてくれないこの子だが、石は大好きなんだ。
心の中が幸せで満たされていくのを花は感じた。
「やっぱり、この子と友達でよかった。」

― きっと今度のコンテストはうまくいく・・・。
 
【注】登場人物の名前や店名は架空のものであり、実在の人物、店舗とは全く関係がありません。

【誕生月石】
ここでは、登場する1月と5月について
1月 誕生石 ガーネット 1月 誕生守護石 オニキス
5月 誕生石 エメラルド ヒスイ 5月 誕生守護石 マラカイト



各誕生月に対応する石が選定されているのはよく知られてます。
その月毎に「誕生守護石」も対で存在します。
さらには、誕生日ごとにも対応する石を選んだものがあります。
【出展】366日の誕生石
https://differencee-jewel.com/daily-birthstone/

因みに星座の石もあって、登場人物の若宮花(ふたご座)の星座石には”アゲート”、”ブルーレース”、”ラリマー”などがあります。

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© 2026 writer:ICHISAN