6月 仮面の下の微笑 ~ 第6話


6月はジューンブライドとかいうが、雨の季節でじめじめして実はイベントをするにはあまり相応しくない季節だと陽子は思った。
陽子という名前のわりに、彼女は雨女だった。なにか大切なイベントがあるときは朝とてもいい天気だったのに本番時間になると必ず雨が降る。
イベント会社のプランナーには向いていないと何度も転職を考えたことがある。
でも続けているのは、こういう企画の仕事をして周りの人を幸せにするのが楽しいから。

今日は、友人の智美の実家で開かれる仮面舞踏会のイベントに招待されていた。
この企画は、智美の20歳の誕生日のお祝いをするのになにか企画を考えてと陽子が頼まれ、「では、立食形式で仮面舞踏会風にしては?」と提案したところ、彼女の父親の雄三が面白がって鎌倉にある知り合いのパーティースペース会場を借りて実現することになったものだ。
招待状をもつ客だけしか入れないので、顔がわからなくても変な人が紛れ込むことはない。

「結婚式場にも使うところだからおしゃれねえ。」
そういったのは、同じくイベントに招かれている智美と一つ上のいとこである亜里沙だ。
智美の家族は大会社を経営する父親と継母の由美、義理妹の博美。智美の実母は体が弱くずっと入院していたが
5年前に亡くなった。長年専属の看護師をしていたのが今の母で博美を連れて父と2年前に再婚した。
継母はどこか控えめな性格で智美との間には何となく距離感があった。

「もう3時ね。智美さん、お客様がもうすぐいらっしゃるわ。二階で早くお父様にいただいたドレスに着替えて。アクセサリーも忘れずにね。」
「はい、由美さん」
そういった後、控室に陽子を伴って入った。
ドアを閉めると白いドレスに着替え始めたが、智美の顔は少し暗かった。
「どうしたの?そんなきれいなドレス着て浮かない顔ね」
陽子はおどけていった。
「うん、、、実は数か月前から変なことが続いていて。」
「変な事?」
「うちのベランダの鉢植えが落下してきてもう少しでケガするところだったの。
数日前には近所をうちのベンつれて散歩させてたら、車がわき道から飛び出してきて危うくひかれそうになったの。ベンが吠えてよろけて転んで擦り傷で済んだんだけど、そうでなかったら大けがだったわ。」

因みに、その時の車はそのまま逃げてまだ見つかっていない。

「父が心配して今日は探偵さんを雇って会場に入ってもらっているらしいの。」
「ええ、お父様から聞いているわ。でもだれかまでは教えてもらっていないんだけど。」
そろそろ時間が近づいてきたので、智美は用意されたネックレスをつけ仮面もつけた。
「素敵なネックレスね。特に真ん中の青緑の大粒の石は指輪と同じ色ですごく素敵。」

ドアをあけて階下に向かうとお客はだいぶ集まってきていた。
みんなドレッシーな服装に思い思いの仮面をつけている。
陽子も知る智美の同じ大学の友人も何人か招待されてきているはずだが、ぱっと見では仮面のせいでよくわからなかった。みんなキャンパスではラフなジーンズが多いからなおさら見慣れた格好でないせいでしょう。
給仕の人は区別がつかないといけないので、男女別で同じ格好で仮面はつけていない。

主役の智美だけはわからないと困るので、開催の挨拶がてら父親が階段の半ばで紹介した。
ガラス窓越しの日の光のもと、青緑のネックレスがスタイルのよい白いドレスに映えてきれいに輝いていた。
始まってしまえば、この大人数だ。すぐにだれがだれかわからなくなるだろう。
シャンパンが並べてある傍の司会スペースに立っていると、若い女性が話しかけてきた。

「今日の姉さん、素敵なネックレスつけてきれいだったわね。サファイヤかしら。」

みると、智子の付けているのとよく似た赤いネックレスをつけている博美だった。

「白いドレスお揃いでかわいいわね。」
「でも私のネックレスは、ルビーじゃないわ。イミテーションなの。まだ子供だからって。」
博美は、唇を噛んで不満そうに言った。
「おかあさんは、もっとちゃんとした石をと言ったらしいけど、父さんに反対されたんだって。」
「お酒が飲めるようになってからね」
隣に来ていた亜里沙が博美に話しかけた。
博美はぷいっと横を向いて何処かへ行ってしまった。

「博美ちゃんまだ未成年だからお酒飲まないように見張っててね。」
「ええ、そういえば亜里沙さん今日は智美や博美ちゃんと同じ形の白ドレスなのね。アクセサリーも似ているわ。」
「親戚のものはみな同じ白ドレスで揃えるようにいわれたのよ。それぞれアクセサリーは違うけどね。」
亜里沙の同形のネックレスは、智美のものに似た青だがもっと深青色だった。たぶんブルートパーズだろう。

歓談のなか、パーティーは進み楽団が入って演奏会が始まった。日は暮れてきたので館内にはろうそくも灯され、シャンデリアで音楽会にふさわしいようになった。
何曲か管弦楽アンサンブルの演奏が終わった頃、突然女性の甲高い悲鳴が聞こえた。
陽子は驚いて悲鳴のした方へ向かう。そこには白いドレスに青いネックレスをつけた女性が倒れていた。倒れた時持っていたであろうワイングラスがわれて周囲に散らばり、そのワインが服にかかっていた。

「智美!」

陽子は叫び、倒れた若い女性に近づいた。隣にいた男性が脈をとり「死んでる」と呟いた。
陽子は仮面をはがしてあっと驚いた。
それは智美ではなかった。倒れていたのはいとこの亜里沙だった。

警察が呼ばれ、みな事情聴取を受けたあと何名かはその場に残るように言われた。
残された全員が一か所に集められ、担当刑事が陽子に質問した。

「なんであなたは殺された女性を智美さんと思ったのですが?」
「だって、最近誰かに狙われているみたいな話しを智美から聞いていたし、着替えでみていたのと同じ白いドレスと青いネックレスだったから。」

その後同席していたある青年が「西洋館宝石殺人事件」としてニュースで騒がせた事件のあっと驚くべき犯人と真相に気づき事件は解決するのだが、その謎ときは別の話で。

・・・後日談は、別のページで改めて書きます。

 【注】登場人物の名前や店名は架空のものであり、実在の人物、店舗とは全く関係がありません。

【誕生月石】
ここでは、登場する6月について
6月 誕生石 真珠、ムーンストーン、アレキサンドライト 
・ 誕生守護石 タイガーアイ

6月の誕生石はシックな石が選ばれています。
真珠は、女性の美や健康、長寿を象徴する丸いアコヤガイが生み出す石。
ムーンストーンは長石で月光のような神秘的な輝きを放ち、愛の予感や純粋な愛、直感力を高める石。
ここにアレキサンドライトが入ったのは、ごく最近の2021年12月20日です。
「昼はエメラルドグリーン、夜はルビーレッド」のように、光の種類によって色を変える希少な宝石として知られています。
今では1カラット(約0.2グラム)以上の宝石質のものはほぼ採れません。
ラボ合成石も存在します。
(注)太陽光(昼)の下で鮮やかな「青緑色」を示し、白熱灯やろうそく(夜)の下で艶やかな「赤紫色」を示す

誕生石を知りたい方は、こちらの参考サイトもどうぞ
【出展】366日の誕生石
https://differencee-jewel.com/daily-birthstone/

星座の石:ふたご座の星座石は”アゲート(めのう)”、”アレキサンドライト”、”ラリマー”、”シトリン”、”アクアマリン” 後半のかに座の星座石は”パール”、”ムーンストーン”があります。

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